Yoko's 人生=旅 on this Blue Planet
高速回転中の青い惑星地球、負けじと走り回る一人の記録。
「人形峠の今 ウラン濃縮終了から15年」(上)遠い道のり 施設廃止は準備段階/(中)見えない行き場 廃棄物処分 法令なく/(下) 新たな道 地下水や鉱床研究へ 2016.3.22.〜24.【山陽新聞】

小出裕章さんは「いったん掘り出したウランの後始末は重要な課題。研究で新たな知見が得られるのは良いことだ」としつつ、「原子力政策を続けるための宣伝材料にしてはならない」とくぎを刺す。



「人形峠の今 ウラン濃縮終了から15年」(上)遠い道のり 施設廃止は準備段階/(中)見えない行き場 廃棄物処分 法令なく/(下) 新たな道 地下水や鉱床研究へ 2016.3.22.〜24.【山陽新聞】


人形峠の今 ウラン濃縮終了から15年」

3/22(上)遠い道のり 

      施設廃止は準備段階

 岡山、鳥取県境の人形峠60年余り前、国内で初めてウラン鉱床が発見されたこの地でウラン濃縮技術を確立した日本原子力研究開発機構の「人形峠環境技術センター」(岡山県鏡野町上斎原)が濃縮ウランの生産を終えて23日で15年を迎える。生産終了後、続けてきた核燃料研究開発施設の廃止に向けた取り組みは、東京電力福島第1原発事故を受けて原子力利用の在り方が揺らぐ中、関心が高まっている。センターの今を報告する。

 ◇

 ガラス越しに円筒形の遠心分離機数千基が並ぶ。人形峠環境技術センターの「原型プラント」。濃縮ウランの生産終了後、時が止まったかのようだ。

   不 透 明

 120ヘクタールに及ぶセンターには原型プラントをはじめ、ウラン濃縮前の中間製品を製造した「製錬転換施設」、濃縮技術の基礎を築いた「濃縮工学施設」の主要3施設が点在する。



 研究施設とする一部を除き、廃止して更地に戻す計画。その主要工程は、設備の「解体」、ウランが付着した解体物の「除染」。さらに除染などで出た低レベル放射性廃棄物を外部に移す「譲渡」の後、最終的な「処分」が行われて完了する。

 大型ウラン系研究施設の廃止は国内初の試み。同センターの中島伸一計画管理室長は「技術やシステム構築に一から取り組んでいる。まだ廃止措置の準備段階」と言う。

 現在、濃縮工学施設は3割程度を解体し、遠心分離機数千基のうち数百基を除染した段階。製錬転換施設は9割の解体を終えたものの、除染はこれから。同じ遠心分離機でも複数回の除染が必要な原型プラントは新たな除染技術を開発中で、解体は手つかずだ。

 センターは2028年度には除染までを終える計画だが、「精製過程で出たスラッジ(中和沈殿物)に含まれるウラン廃棄物の組成は未解明。ウラン濃度が高い廃棄物もあり、処理技術の確立はこれから」と中島室長。

 解体物を保管していたドラム缶が腐食して詰め替えが必要になったり、新たにウラン測定技術の確立試験を行うことになったりして製錬転換施設では除染終了が5年先に延びており、想定通りのスケジュールで進むかどうかは不透明だ。


  進まぬ理解

 技術面だけではない。解体や除染で出た低レベル放射性廃棄物をどこに処分するかが決まって初めて廃止措置は進むが、現段階で見通しは立っていない。

 福島第1原発事故以降、放射性物質に向けられる国民の目は厳しさを増している。一方、日本原子力研究開発機構は、停止中の高速増殖炉もんじゅ(福井県)の運営主体でもあり、抜本的な在り方見直しのただ中にある。

 「人形峠の施設廃止予算は限られている。ウラン系廃棄物を除染しリサイクルする制度への一般の理解も進んでいない」。センターの松原達郎副所長の言葉は、廃止までの道のりの険しさを物語る。


【ズーム】 人形峠事業所
 1955年11月、旧通産省地質調査所が国内初のウラン鉱床を発見し、町年に原子燃料公社が人形峠出張所を開設した。79には動力炉・核燃料開発事業団が初の国産濃縮ウランの生産に成功。原爆を持たない国では唯一、濃縮技術の保有を許された。2001年3月23日に濃縮施設の生産を停止。05年に発足した日本原子力研究開発機構の下で一部研究施設の廃止措置に入っている。人形峠で確立された技術は青森県六ケ所村のウラン濃縮工場で活用されている。

(写真)
原型プラントの遠心分離機(人形峠環境技術センター提供)
人形峠環境技術センターの主要3施設(同センター提供)
地図






3/23(中)見えない行き場 

      廃棄物処分 法令なく

 ウラン濃縮原型プラントなど主要3施設の廃止を進める人形峠環境技術センター(岡山県鏡野町上斎原)は、ウランが付着した金属類やフィルター、廃液、スラッジ(中和沈殿物)など約2万4千トンの低レベル放射性廃棄物を見込む。

 設備の解体だけでなく、ウラン濃縮終了前に出た廃棄物も含めた量で、これまでの分はドラム缶に入れて施設内に保管している。センターは廃棄物を減らすため、金属廃材を除染。2014年にはアルミ合金10トンが初めて原子力規制委員会の安全基準をクリアし、敷地内の花壇で再利用している。

 ただ、リサイクルを進めても1万1千トンが残り、最終的な処分先が必要しかし、ウラン系の放射性廃棄物は処分基準を定めた法令さえできてない。


  取り扱い困難

 要因の一つは、ウラン特有の取り扱いの難しさだ。

 ウラン系廃棄物の半減期は代表的なもので44・8億年。原子力発電所から出る半減期が30年などのセシウムやコバルトを合む放射性廃棄物と比べ、極端に長い。

 加えて、ウラン系廃棄物は、10万~100万年の間にラドンやトリウムといった放射性物質が次々と生まれ、放射能レベルがベクレル単位で8~20倍と大きくなる。

 日本原子力学会は15年、ウラン系廃棄物について、一部を除いて浅い地中処分が可能と提言したが、専門家の意見は「自然界に存在する物質であり、管理可能」とする立場と「長期にわたる安全性は保証できない」という考えに分かれている。

 もう一つの要因は、国の「核のごみ」への対応の遅れだ。法令基準を作る原子力規制庁の前川之則安全規制管理官は「原発から出る比較的高いレベルの放射性廃棄物の基準づくりを先行している」とウラン系が後回しになっていると認める。

 市民団体・原子力資糾情報室(東京)の伴英幸共同代表は脱原発を前提とした上で、「ウラン系廃棄物の管理は難しいが、将来的にできる範囲で安全性を担保して処分するしかない」と指摘する。


  「乏しい資源」

 センターには、濃縮過程で出たウラン約2700トン分が六フッ化ウランの形で貯蔵されている。燃えにくいウラン238を多く含む物質で空気に触れると猛毒のフッ化水素が発生する恐れがあり、長さ3メートルの鋼鉄製の筒型容器に入れている。

 ウラン系廃棄物と違うのは「資源」と位置づけられていること。国の核燃料サイクル政策の一環で、高速増殖炉もんじゅ(福井県)の燃料にする計画だ。センターの竹中信吾所長は「資源の乏しい日本では六フッ化ウランのような劣化ウランも大切な資源」と話す。

 しかし、もんじゅは事故やトラブルが続き、長く停止したまま。運営主体も含めて検討中で再稼働のめどは立たず、六フッ他ウランの活用の先行きは見えていない。

【ズーム】 核のごみと処分
 原子炉等規制法などで、原発から出る使用済み核燃料からプルトニウムを取り出したものを「高レベル放射性廃棄物」、他を「低レベル放射性廃棄物」と区分している。低レベルの一部はドラム缶に入れて出較的浅い地中に「トレンチ処分」「コンクリートピット処分」という方法で、埋設。青森県六ケ所村などでは既に行われている。低レベルの中で比較的濃度の高い廃棄物は地下50~100メートルの「余裕深度」に処分する。
写真)低レベル放射性廃棄物のスラッジ(中和沈殿物)=人形峠環境技術センター提供






3/24(下)新たな道  

      地下水や鉱床研究へ

 濃縮ウランの製造を終了した2001年3月以降、人形峠環境技術センター(岡山県鏡野町上斎原)はウラン系核燃料施設廃止の“フロントランナー”として研究・開発を担ってきた。

 「先頭を切った所が片付けなくては。次世代につけを残さない“たたみ方” に関する研究がわれわれの使命だ」とセンターの竹中信吾所長は力を込める。


  珍しい環境

 標高約740メートルに位置する人形峠。国内初となるウランの露頭が見つかったように、鉱床が比較的浅い場所にあるのが特徴だ。

 センターによると、浅い鉱床は外部から酸素が供給されやすく、酸素と結合したウランは一般に地下水に溶けやすい。しかし、人形峠の場合、急峻-きゅうしゅん-な場所にあるにもかかわらず、ウランが動く速度が遅いという。

 竹中所長は「世界的にも珍しい環境」と強調。昨年4月、センター内に環境研究実証試験準備室を設立し、新たな研究に乗り出した。

 準備室の杉杖典岳室長代理は「地下水の動きや鉱床の酸素濃度を分析することで、放射性廃棄物や重金属の処分環境の安全評価や工学的措置に関する知見も得られる可能性がある」と期待する。

 研究はまだ準備段階だが、廃止となった坑道で深さを変えて酸素濃度を比べたり、地下水の広域的な動きを調べたりする方向だ。


  情報公開を

 ウラン発見から60年。鳥取県と岡山県にある旧坑道の周辺にはウランの探鉱や採掘で出た岩石や土砂が17カ所、約20万立方メートルにわたってたい積する。センター内には鉱石からウランを抽出した鉱さいが屋外に貯蔵され、それぞれモニタリングなどを通じて管理を続けている。旧坑道はセンター内にもあり、一部は見学もできる。

 元京都大原子炉実験所助教で脱原発運動を展開する小出裕章さんは「いったん掘り出したウランの後始末は重要な課題。研究で新たな知見が得られるのは良いことだ」としつつ、「原子力政策を続けるための宣伝材料にしてはならない」とくぎを刺す。

 昨年、国は高レベル放射性廃棄物の処分地選定を国主導に転換。国の諮問機関は活断層や火山から一定の距離がある海岸から20キロ以内の場所などを条件とする中間報告をまとめており、国は科学的有望地として年内に公表する予定だ。資源エネルギー庁などは昨年、岡山市内で説明会を開いた。

 県内への高レベル放射性廃棄物処分場の立地に反対し、センターの監視活動などに参加してきた津山市の中島博さん(62)は「地層に関わる研究が高レベル放射性廃棄物処分場の呼び水になる可能性があるのではないか」との疑念を示し、「情報公開を進めながら取り組まなければ県民や国民の理解は得られない」と高い透明性を求める。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 山内悠記子が担当しました。

(写真)ウラン鉱床の見学坑道内=人形峠環境技術センター提供

【ズーム】 人形峠ウラン鉱床
 人形峠環境技術センターによると、人形峠の鉱床は約1000万年前に生まれた。この地層のー部が川による土壌浸食や火山活動で湖の底となり、バクテリアなどの影響でウランが集まって蓄積された。火山活動による溶岩で湖にふたがされた形で保存されたが、周囲の花崗岩とともに隆起し、川の浸食もあって露頭が地面に現れたという説がある。




スポンサーサイト

テーマ:放射能汚染 - ジャンル:政治・経済

コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
http://yokoblueplanet.blog112.fc2.com/tb.php/13667-82c1c4fd
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事へのトラックバック