Yoko's 人生=旅 on this Blue Planet
高速回転中の青い惑星地球、負けじと走り回る一人の記録。
水戸巌氏講演記録 1)「原発はこんなに危険だ」 1978.4.22
**故水戸巌先生が茨城県水戸との関わりの深い方だとはここに至るまで知らなかった。茨城県の海辺にある東海村の東海第二原発設置阻止市民運動にも深く関わっていらして下さった方、我々茨城県人にとっての恩人であると云える方だ。
  いまでも東海村で事故があったと聞けば、どんなに小さな事でも気がかり。ニュースになるのが、氷山の本の一角であると云うあまり嬉しくない事実が見に染み付いているために。
  時を経て、今、非常に嘆かわしい事態に陥っている日本だけれど、茨城の恩人である水戸先生を恩師と呼ばれる小出先生の活動に少しでも参加できる事は正直嬉しい。一人一人が考えできる事から始める事、どんなに小さな事でも。**


水戸巌氏略歴

1933年(昭和8)3月、神奈川県横浜市鶴見に生まれる。戦時中、福島に疎開し、そこの中学校を敗戦後卒業して宇都宮高校に入学。その後、東京大学理学部に進学する。東大大学院修了後、甲南大学教員となり6年間勤務。
1967年(昭和42)東大原子核研究所助教授となる。専門は放射線物理学。この年、日高六郎、羽仁五郎氏らと「救援連絡センター」を創立し、その支柱となる。1971年(昭和46)頃より反原発運動にかかわり、以後日本の反原発の主導的役割を担う。特に、水戸との関係は深く、東海第二原発設置阻止の市民運動が起こり、ついでそれが裁判にもち込まれると、「訴状」の作成段階から今日に到るまで、裁判の全過程を科学者としての知識と良心で力強く支えてきた。
1975年(昭和50)、芝浦工業大学電気工学科教授となる。
なお、1960年に結婚。双子の子息と親子三人で厳冬の剣岳に登山し、1986年12月30日消息をたった。



水戸巌氏講演記録

(1)原発はこんなに危険だ -1978年4月22日講演
(2)チェルノブイリ原発事故と東海 -1986年5月14日講演
(3)原発の事故解析と災害評価 -1983年7月8日講演

共催:茨城県平和擁護県民会議原発対策部会並びに原告団
於:茨城県労働福祉会館

[解説]
水戸巌氏のこの三つの講演記録は、いずれも茨城県平和擁護県民会議原発対策部会並びに原告団の共催により、茨城県労働福祉会館を開場として実施された講演の内容である。この他に1979年4月15日にスリーマイル島原発事故に関する講演会が行われたが、本書には収録できなかった。なお、1と2は『東海原発裁判ニュース』に掲載されたものである。水戸市の講演は原発をめぐるその時々の重要な局面でなされたものであり、その端切れのいい口調と明快な主張は参加者に大きな感銘を与えた。ただこのような文書に置いて、水戸氏のその口調や烈々たる反原発の気迫が充分に伝えられないのがざんねんである。なお、非専門家の原告団が四苦八苦してテープを起こした。単純なミスや不明瞭な点があるとすれば原告団の責任であることをご了解いただきたい。


(1)原発はこんなに危険だ-1978年4月22日講演-

肝腎なのはたった一つのこと

今日は原子力発電の危険性ということについてお話をするわけですが、そんなむずかしいことではなくたった一つのことだけが肝腎なことなのです。それは原発の中には死の灰が大量につくられるということです。この事実は原発を安全だといいはる人でも認めざるを得ない。この裁判で被告となった国側の答弁の中でも争いようなく認めているわけですね。この問題が原発の、さらには再処理工場の危険性の出発点になっている。つぎに、この点にくらべればカッコの中に入れておいてもいいぐらいなんですが、他の我々の知っている毒物は、例えば青酸カリは簡単な化学的処理で危険でないものに容易にかえてしまうことができます。どこかで造られているかも知れない生物兵器にしても、危険だから全部捨てようということになれば、それを熱で燃やしてしまえば全部死んでしまう。ところが放射性物質については、この危険性をなくすっていうことはほとんどできない。人間はこれに手を加えることはできないということですね。最悪の場合には数百万年間その危険性は持続する。ある方法がうまくできたとすれば、数千年間にその時間を縮めることはできるかもしれない、たかだかその程度だということです。
この二つのこと、現に運転されている原発の中に大量の死の灰が存在すること、そしてその危険性は容易に消えないこと、この二つのことが根本にある。そしてそれはお互いに争うことができない客観的な事実だということをおさえておきたい。その上で推進側の人は何というかというと、一方ではその危険物を大量に外へ出さないで何とかやっていけるんだといい、他方では日常的に少しずつ出してしまっている、というよりはむしろ計画的に出しているが、それは絶対に人体に影響がない、といっている。大量にでるのは事故の場合ですが、大事故は万が一にも起こらない、もし起きたとしたらそれは地震などの災害と同じように考えてがまんしてくれ、とこう彼らは言うわけです。それから、日常的なもれ出しについては、それは自然放射能とくらべてたいしたことはない、という言い方をします。
これらに対して私たちはそうは考えないと言っているわけです。


原発と原爆

さて原発で使われる燃料はウランですが、天然にとれるウランではなく濃縮ウランという少し手を加えたものが使われます。ウランの中には燃えるウランと燃えないウランがあり、原子炉のなかで燃えたウランがそのまま死の灰になってしまうわけですね。これが0.7%はいっているのが天然ウラン。濃縮ウランの場合は3-4%ぐらい。100%近くまで濃縮したウランをある量以上にまとめると、急に連鎖反応を起こして大変な熱とか光を出す。これが原子爆弾ですね。ですから、燃えるウラン=ウラン235が一方では原爆に使われるし、他方では原発に使われている。それじゃ原爆と原発の違いは何かといいますと、ウランの分裂するスピードの違いということで、簡単にいえば1キログラムのウラン235が10万分の1秒、ですからものすごく短時間なわけですね、その位で全部はじけてしまえばそれが原爆。一方同じ1キログラムが10時間ぐらいかかってゆっくりと分裂していけばそれが原発。原発の場合は燃やしながら水で冷やしているわけですが。この時間の差、人間のコントロールの有無というその遠いは非常にあるわけですが、出てくる死の灰の量には変わりはないわけです。
さっきからウラン1キログラムといっていますが、実は広島の原爆はウラン235が1キログラムはじけたのに相当するというふうに推定されているわけです。実際に使われたのは100%のウラン235が10キログラムで、その10分の1位が連鎖反応をおこして爆発し、あとの9キログラムは大変な圧力で分裂反応を起こす前にバラバラにはじけてとんじゃったのだろうといわれています。
そうすると、原発でも10時間たつと広島におっこったと同じ位の死の灰がたまってしまうということがわかるわけで、1日で2~3発分、1年で広島型原爆1千発分が作られるということになります。1千発分の放射性物質が内蔵されるというのは正確ではないと考える方もあるかと思います。半減期の短いものは1年間で消えちゃうので。しかし、死の灰の中でも人間に非常に重大な影響をもたらすものは寿命の長いものが多い。例えばセシウム137やストロンチウムは30年近い寿命で、1年ぐらいでは減ることがなくずっと同じ強さを保っているわけで、そういうものについては1千発分の量だけたまっていくわけです。それからウランの分裂によって出来たのではなく、原子炉の材料になっている鉄などが放射能化したものにコバルト60とかマンガンがあり、これも非常に長い寿命を持っています。
つまり、私たちが広島の死の灰の1千発分が原発に内蔵されるという場合には、寿命の長いものについていっているわけで、その限りでは人間に大きな影響をもたらすものだという意味で言っているわけです。
「異質」な危険性

この死の灰が外へ出てくるということになればー体どれだけの被害をもたらすかというのが問題ですね。原発には1千発分はいっている、その潜在的な危険については議論の余地がない。問題はその潜在的危険の大きさをどう考えるかということになるわけですね。私たちの周辺にはいろんな工業施設がたくさんできている。その潜在的危険の大きさを考えてみると、例えば石油コンビナートではどんなに大きな事故を起こしても、その中にいる労働者が数十人か数百人死ぬかも知れない(それ自体は非常に大変なことだ)、あるいは周辺住民の何人かがなくなるということも場合によってはあり得る。しかしどんな大事故を考えてみても私たちの知っている限りの工場施設というのはだいたいその程度のものだと考えていい。それに対して原発の危険性っていうのは、ざっと計算してみても数万人の人が数日間ないし1か月ぐらいの間に死んでしまう。それから20年たつか30年たつかわからないけれども、その間に晩発性障害で死んでいく人、さらに同じ程度で遺伝的に障害を受ける人が出てくるかも知れない。そういうふうに非常に大きな危険性をもっているわけですね。それは従来の工業施設と原子力施設のもっている危険性が全く異質のものだということです。簡単にいうならば、一つの地域が壊滅してしまうという、そこにいる労働者も主婦も市民も子供も、原子力施設から直接利益を受けているかいないかには何の関係もなく、皆殺し的被害を受けるというのが原子力施設であって、それは従来人類が所有しなかったものであるわけです。そこがポイントだろうと思う。


天災だからあきらめる

この異質性は私たちがいうだけではなく、実は原子力推進側の人、しかも安全審査会の会長である内田秀雄さんが、別の角度からはっきりと言ってらっしゃるわけです。内田さんはこういう潜在的危険性は認めるし、工学的施設に安全性というものが100%でありえない以上、それが顕在化する可能性を否定できない。しかし万が一大事故が起こっても、それはそれを作った人の責任ではない、それは免責されなくてはいけない、 普通の天災と同じに考えなくてはいけない、つまりそういう新しい考え方をしなくてはいけない、とこう言っているのです。従来の工業施設、たとえば石油コンビナートが起こした事故に対して、これは天災と考えなくちゃいけないと主張した人はいないわけです。それを内田さんは原子力施設の場合は天災と考えて皆さんあきらめてもらわなくちゃいけないと、はっきり文章にしているのです。
それを勘定高い計算であらわしたのが保険の話です。保険会社は既成の工業施設については保険を受け入れますが、原子力施設についてはそれをやろうとしないわけです。つまり、原子力施設について、事故の際に保険会社が支払う最高額が決まっていて、それ以上はどんなことがあっても支払う必要がないと法律は規定しています。原子力委員会は安全審査をした時に、技術的に考えて絶対に起こりそうもない事故まで考えて、たいした被害はでないと計算して、それ以上の事故があたかもないような顔をしていますが、もし本当にそういう事故が起こらないのなら、保険会社は安心して何千億円であろうと何兆円であろうと、起きたことは全部引き受けますといえるはずなんですね。ところがそれを言えないから、支払最高限度額を決めている。それ以上の事故もあり得るということなんです。内田さんはそれを天災と考えてくれというんです。ここのところが非常に大事なんですね。くりかえしていえば、原子力施設は従来の工業施設と全く異質なものだということです。この異質性はお互いに認めている。その上で推進側の人は、それは天災だと思えといい、私はそういうものは原則としておくべきではない、人類はそういうものは持つべきではない、一地域が全滅するようなものは置くべきではないというわけです。私は、南極みたいな所にどうしても人間が住まなくちゃいけないとして、その場合小型の原発を使いましようということになったら、これにはことさらに反対するつもりはありません。
都市のごく近くに、しかも110万キロワットのものをおくのはどうしても許しがたい。これが東海2号炉訴訟で、都市接近、大型化の無謀はけしからんといっている内容なんですね。ついでにこの訴訟の争点として、もう一つ集中化ということをあげてるわけです。東海村には30いくつもの原子力施設がある。その中には、燃料の加工など非常な汚染をもたらすものが前からあったが、加えて再処理工場が動き出した。このような施設の集中化によって被曝の重畳が大きな問題となるわけですね。


原発の事故

さて、もう少し詳しく潜在的危険性がどういう形で顕在化してくるか、冷却材喪失事故の過程をとって述べてみます。
燃料の周囲はたえず水で冷やしている。この水の流れが止まり、分裂反応が進行しているとすれば水の温度はどんどんあがってしまうわけです。これは冷却水がなくなる少し前の話ですが、アメリカのある原子力発電所でかつて実際に起こったことです。電源ケーブルの密集しているしている場所が火事になり、それで電源が全部ストップし、当然水もまわることができなくなり、水温がどんどん上昇してしまった。この時、水が完全にまわらなかったら、短時間でこの水は蒸発してしまい燃料自体がとけ出すということが起きえたわけですが、そこまでいく前に、補助用につけていたパイプの電源が通じることが出来て燃料溶融事故をようやくさけることができたわけです。
つまり、水の流れが止まっただけでも燃料溶融事故というのは起こりうる、そういう状態なんですね。
一番大きい事故として推定されているのは主蒸気パイプが破断するというものです。そうすると内部は150気圧という高い気圧(BWR)ですから、ほとんど一瞬のうちに水が全部なくなってしまう。しかし燃料棒の中には死の灰がいっぱいつまっている、その死の灰が熱を出し続ける。それを崩壊熱といっている。崩壊熱は分裂反応によって出る熱のだいたい7%といわれています。そうすると電気出力百万キロワットの原発の熱出力は3百万キロワットですから、約20万キロワット相当の崩壊熱が死の灰から出るわけです。いってみれば、20万キロワットの中型火力発電所がカラだき状態になってしまったということと同じです。これはみるみるうちに温度が高くなり、約10秒もしますと1千度位になってしまう。崩壊熱の他にもう1つ余熱がある。これも無視できない。アイロンは電源をストップしでも、すぐさわれば熱いですね。それと同じことで分裂反応が止まってしまっても燃料棒内にたくわえられた熱はすぐに冷えてしまうんではなくて、まだ残っている、それが余熱です。
さて、1千度ぐらいになりますと、大変やっかいなことに燃料棒の金属と水とが激烈な化学反応を起こして、またまた熱を発生します。これを反応熱といいます。1千度をこしますと、崩壊熱よりもこの反応熱が主役になって、そのためにつぎつぎに恐るべき事態が起きてきます。パイプ破断事故が起きて1分もすると、金属・水反応が開始します。こうなったらECCSはもう手遅れなんですね。こういうことが起こる前にECCSが作動しなかったらどうなるか考えてみますと、150トンの燃料全体がどろどろの溶融物となる。水がもうなくなっているのですが、わずかでも炉心に水が残っていると、その水の残り具合によっていろんな違いがでできますが、その水の中へ溶融物がおち込むことによって、水は一気に蒸気になる、いわゆる蒸気爆発ですね。これによって、場合によっては原子炉容器が破壊される。そしてふっとんだ容器の断片が格納容器の天井を打ち破ってしまう、これが最悪の事故ですね。
燃料が溶けることを炉心溶融と呼んでいる。この炉心溶融から格納容器破壊までは残っている水の量とか、さまざまな偶発的な条件によっていくつかの道がある。熱と圧力による破壊、水素爆発による破壊、蒸気爆発による破壊などいくつかの道を通して格納容器破壊に至るということです。


チャイナアクシデント

当初のころチャイナアクシデントというのが非常に問題にされましたが、それはどういう話かといいますと、格納容器にひびが入っちゃうとか、あるいは天井がぬけちゃうとか、そういうことがなかった一番幸いな場合で、原子炉容器そのものも溶けてしまって、どろどろの溶融物として格納容器の土台の上に溶けおちる。コンクリートとの反応が起こってそれを溶かし、コンクリートも含んだ巨大な溶融物として地面にもぐり込んでいく。地面の中には土があり、岩石があり、水があるが、高温のもとではそれが全部熱源に変わっていくわけで、溶融物はどんどん巨大になって地中にもぐりこむ。これは理論的にはどこまでもとどまることはないということで、アメリカでこういう事故が起きたら地球の裏側の中国までいっちゃうだろうと、これは冗談ですが、中国まで含めてしまう事故ということで、これをチャイナアクシデントと呼んだんです。大地は非常に大きいですから現実にはそういうことにはなりませんが、しかし相当広い範囲で陥没していき、場合によっては地下水に触れることによって大爆発を起こすかも知れないし、地下水を猛烈な死の灰で汚染してしまう、そういうことは当然考えられます。
ところで、チャイナアクシデントに至るまでには、数日間はかかる、そうしますと、しかも地中にもぐってしまうんですから、大気中に放射性物質が放出される割合は比較的低いわけで、むしろ事故としては幸運な方の話なんですね。それに対して、蒸気爆発によって格納容器の天井がこわれてしまうというようなことが起こったとすれば、事故発生から非常に短時間、30分から1時間、あるいは数時間のうちに、減衰していない強力な放射性物質が外へとびだして大気中にまじることになる。


事故評価のあゆみ

こういう場合にはもともと気体であるような死の灰は100%外へ出てしまう。人間に対する破壊の大きいヨウ素などは非常に気化しやすいもので、70%は外へ出る。それから固体になると外へ出る割合は減ってくわけだけれども、例えばストロンチウムなどは100%出る。こういう数字は現実にはどのぐらい信用できるかということは別として、その物質の化学的物理的性質によってどのぐらい外へ出るかということは一応試算できるわけです。そうなるとあとは風にのって、その時の風速、風向によってどこへ飛んで行って、どの位の人にどの程度の危害を加えるか、ということは比較的容易に計算できる。こういう計算は20年以上も前にアメリカで最初におこなわれました。一番初めは数万キロワットの原発で試算されたのですが、その時は3千人以上の人が死亡するのではないかという結果が出た。これは大変だということで、その当時から、ECCS――つまり、こういう事故を未然に防ぐために、事故が起きたら10秒から1分の間に原子炉を水びたしにしてしまう装置を、どうしてもつけなくちゃいけないといわれるようになったんです。
さらに、百万キロワットという大型になったらどうなるかという計算を、今から10年以上前にアメリカ原子力委員会がやった。その結果、4万5千人は死んでしまうという非常にショッキングなものだったんです。しかも、広大な土地が、死の灰がばらまかれることによって人の住めない状態になる、あるいはそこに住んでいれば、明らかに放射線障害を受けるような状態になってしまう。その土地の広さはペンシルバニア州という、北海道よりも広い、面積だけ比較すると1.5倍もある広い地域全体にわたって土地が汚染されるというんですね。こういう結果だけを出したのでは人々に対するショックが大きすぎるということで、原子力委員会はその後10年間、ひた隠しにしていた。
その後出たラスムッセン報告はこれに確率論を援用して、たまたま悪い結果が生まれるのはこんな計算の結果のせいなんだということで人々を安心させようとしたわけなんですね。この計算は、非常にたくさんの核種について、どれだけ外へ出るか、それがどう被害を与えるかについて大変わかり易くしてくれた。ですから私はそういう点で評価してるんですが、確率の計算になりますと、これは確率論の悪用でほとんど信用できないと思う。本当に1億年に1回なのか、10年に1回なのか、こういう計算では何もでてこない。ひょっとしたら10年に1回なのかも知れない。たとえばジャンボジェット機が墜落する確率というのは計算できるわけです。2つともエンジンが止まってしまって墜落する確率は100万回に1回だというふうに。しかし墜落事故は現実に起きている、百万年たたないうちに1年かそこらしかたたないうちにそれは起きている。そういうことを考えると、確率計算っていうのはどうにでもなる、百万回に1回などという数値はその程度のものだということがわかってきます。


まやかしの確率論

事故解析にたずさわっている人々が、このラスムッセン報告の絶対値は絶対信用できない、事故解析の方法っっていうのは比較の時に使う、今、BWRとPWRとをくらべてどちらを採用するか、どっちがより危険が少ないかということを評価するためにこっちが1億年に1回で、あっちが10億年に1回という計算がもし出たらこっちを採用する、ということで、決してこの結果をみて本当に1億年に1回なんだというふうに考えてはいけない、これとあれの相対的な値だけに意味があるんだ、と言ってるわけです。それからまた、比較としての意味があるということを誤解されると因るんです。ラスムッセン報告は自然の災害のことも計算した。都市のど真中に巨大なイン石が落下して、百人とか千人くらいの人が死ぬ、そういうことはありえないことではないですね。そういう計算をして、それがだいたい1億年に1回の割合でおこると、だからイン石が都会のど真中に落ちて何千人かの人が死ぬのと、原子炉が事故を起こして何千人かの人が死ぬのと同じことなんだという説明をしようとしている。しかしこれは比較にならない。工学的人工的施設の間で、どの道をとったらいいのか、あるいはBWRでもいろんなやり方がある、そのやり方のうちでも、どれが一番事故の確率が小さいか、そういうことの比較には役に立つ。似たようなものの比較には役に立つけれども、一方は自然の災害、これは非常に単純な計算でできるわけ、そういうものとそれとは全く異った工学的施設、その間の事故確率を計算して比較する、この比較はすでに意味がない。だからイン石の落下に較べてどうなのかという議論も全く意味がない。私たちが大切に思うことは、大事故の確率がゼロでなかったということだけです。


「重大事故」と「仮想事故」

さて、格納容器の破壊はECCSの不作動、あるいは有効でない作動によってもたらされる。ここで大切なのは原子力委員会の安全審査会が重大事故とか仮想事故とかの言葉を使って、敷地の外にいる人は何の被害も受けない、受けても許容量以下の放射能にすぎないという結果を出していることです。この場合、重大事故とは技術的見地からみて最悪の場合には起こるかも知れない、最悪の事故。仮想事故は、重大事故を超えるような、技術的見地からは起こるとは考えられない事故、と言っています。つまり起こるとは考えられない事故まで我々は計算した、そしたらそれでひと1人傷つくこともない、そういう結果が出たんだというわけです。私は最初のうちは最悪の場合を本当に科学的に定義して計算したんだろうと思った。しかしどうもそうではないらしい。重大事故というのは、パイプのギロチン破断を考え、ECCSの作動が若干遅れる条件、それから一部が作動しないという条件を加えているわけです。それで計算した結果、炉内の希ガスガスが2%(私のいった100%とは大違いです)、ヨウ素1%(70%とは大違い)。しかもそれは格納容器内に放出されるだけで外には出ない、と、これでは技術的見地から言って最悪の場合には起こるかも知れないということとは何も関係ないんですね。そもそも、「若干」とか「一部」作動したとかしないとか、の条件で計算できるはずがないんですね。結局、重大事故の定義というのは希ガス2%、ヨウ素1%が格納容器内に放出される、ということなんです。だからこんなことが技術的見地ならみて最悪な事故だなんでいうことは、日本語を知らないにもほどがある。こういう重大事故なんでいう言葉に私たちはまどわされてはいけない。次に仮想事故ってのは起こるのは考えられない事故だという。ところがこの事故も起こるんですね。アメリカ原子力委員会も、内田秀雄さんもそれを認めている。この場合もその定義らしいものをみると、全燃料の溶融を仮定して、炉内の希ガス100%、ヨウ素50%が格納容器内に放出される、としているわけです。ここでは全燃料の溶融は仮定する、しかし格納容器は絶対にこわれないんですね。さっき話したように、ECCSが1分かそこいらの間に有効に作動しないと必ず炉心溶融がおこる、炉心溶融が起きてしまえば、物理的な法則に従って格納容器がこわれる、勿論格納容器スプレーが働くか働かないかという問題がありますが、いずれにしても外部に放射能はもれてしまう。炉心溶融はイコール、その一部分にせよ全面的にせよ格納容器がこわれる、ということだ。これは物理的必然なんです。炉心溶融がおきてしかも格納容器が健全であるということは、それこそ技術的に起こり得ないですね。彼らのいう仮想事故は、格納容器が健全なんだからそこへ放射能をとじ込めてしまう。しかし圧力がだんだん増大してきますから少しずつ外へ出していく。1か月もそうやっているわけです。ヨウ素は8日間で半分になるから1か月もおいとけばどんどん減少するから、人に対する被害は加えられないんだという計算をやって結局敷地外の人には許容量以上の放射線を与えませんというわけです。


炉心溶融は格納容器損傷ヘ

今まで話してきたように、こんなことには絶対ならない。炉心溶融は格納容器の損傷につながり、それは大量の放射能を一挙に外部へ出すことになるんです。ところで、この場合ECCSが働いているのかどうか彼らは言葉をにごしてしまう。それは何故かというと炉心溶融を仮定する所ではECCSは作動しないと暗に言っているわけですし、格納容器の損傷はないという時にはこれが作動しているということを仮定しているわけで、全く自己撞着しているものだから、ECCSについては何もいえないわけです。ECCSについて一言しておけば、実物大の原子炉でそれが有効に作動するかどうかの実験は全くありません。ECCSが作動して10秒後に何度になり、20秒後には何度になり、水位はどこまであがるかというようなことは実験的には全くなされていない。模擬テストがなされているだけですね。原発が大事故を起こすか起こさないかという一番きめ手の、重要なECCSがこういう状態だということは非常に問題だということです。


東海2号炉で大事故

さて、東海2号炉で最悪の事故が起こった場合に被害がどうでるか。非常に単純化して東京方面に向って一様に風が吹いているとします。放射能雲は最初は小さく、しかし濃い濃度で、それがひろがりながら薄くなり、風にのって移っていくわけです。放射能雲からの強い放射能の直接照射によって急性で死ぬ人は東海で3,600人、勝田で18,000人、水戸で9,000人となり、東京では急性死者はでないだろうということで、全体で30,600人。つぎに放射性物質を吸いこむことによって内部被曝し、死ぬ人(晩発性死者)は勝田で600人~1,600人、水戸で3,400人~1万人、東京で3万~8万6千人に達する。さらに、ガンなどでいつか死ぬだろうという人が全体で4万~13 万あるということです。晩発性患者についてみると、これは子供の場合ですと甲状腺腫ようが非常に多いのですが、勝田で3万人、水戸で13万人、東海ではみんななくなってしまいますからゼロ。東京都では160万人となる。全体で220万人。この数字は決して大げさな場合の計算をしたのではなくて気象条件など、よりひかえ目に計算をして、こういう結果が出たということです。

(本文は、去る4月22日の講演会のテープを起こしたものです。整理の不手際はすべて編集者の責任です。)



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テーマ:原発事故 - ジャンル:ニュース

コメント
この記事へのコメント
 僕は冒頭の ”肝腎なのはたった1つのこと”を繰り返しくりかえし胸にたたき込んでいます。
2011/06/03(金) 07:25:35 | URL | いっちゃん #-[ 編集]
はい、死の灰が出ると云う事実。
いっちゃん、こんばんは。

>  僕は冒頭の ”肝腎なのはたった1つのこと”を繰り返しくりかえし胸にたたき込んでいます。

はい、「たった一つの事だけが肝心な事なのです。それは原発の中には死の灰が大量につくられるということです。
この事実は原発は安全だと言い張る人達も認めざるを得ない。」

2011/06/03(金) 11:04:38 | URL | yokoblueplanet #-[ 編集]
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