Yoko's 人生=旅 on this Blue Planet
高速回転中の青い惑星地球、負けじと走り回る一人の記録。
水戸巌氏講演記録 2)「チェルノブイリ原発事故と東海」 1986.5.14
水戸巌氏講演記録 2)「チェルノブイリ原発事故と東海」 1986.5.14

「スリーマイル島事故の犠牲者はすでに出たし、現在も出ている。それが闇から闇に葬り去られているというのが真実です。チェルノブイリの場合もガン死者1万人という予測もありますし、もっと多いかも知れない。しかしそういう人達はわからないままに葬り去られてしまうというふうに思うんです。つまり、晩発性の障害に関しては完全犯罪だということです。原発事故は2万人でも3万人でも完全犯罪で殺せるんです。
  東海2号の事故で一番ひかえ目な計算でも東京都民のガン死者は8000人です。30年で8000人。こんな数字は無視されてしまいます。よくわかりませんが、東京の1千万人の中で、1年間にガンで死ぬ人は何千人かいるでしょう。その中で200人やそこらは増えてもわからない。わからないというだけで無視されてしまう。ですから原発事故は、どんなに小さくとも起こしちゃいけないんです。
  スリーマイル島原発のような事故の起こる確率は10~20%です。東海2号炉のそれも10~20%。チェルノブイリのような事故の起こる確率は3%です。これは絶対無視できるような数字ではありません。私は水戸市民が本当に自分達の将来、子孫の将来を考えるならば、あらゆる手段をつくして、東海2号炉は止めさせる必要がある、と考えます。」水戸巌



(2)チェルノブイリ原発事故と東海-1986年5月14日講演-

今回、会場はいっぱいで入れなくなるんではないかと思って来たんですが。つまり、水戸の住民にとってはソ連の原発事故はそれだけの事故であるわけです。
チェルノブイリからからは多分20キロぐらい離れている町の、総計5万人の人が2、3日のうちに全部退避させられた。東海村から20キロ圏内ですと、60万人が住んでいます(東海第2原発設置時、現在は70万人を超える)が、その60万人がどうやって2、3日のうちに退避できますか。ですから、今、水戸市は騒乱状態になっていて、東海原発は直ちに止めろという大規模な運動が起こっているのではないかと思ったのですが。水戸市でもし選挙があるとするならば、争点は東海村の原発を撤去させるかどうかでなければなりません。自民党の奥さんも子供も一様に死の灰にやられるんですから、水戸市民ならばですね。あれだけの事故が起きたら東海原発はとり除けというのが当然の反応だと思うんです。


マスコミの報道

さて、話の順序として一番目に29日以後の報道の問題点、つぎにチェルノブイリで何が起こったか、最後に東海原発裁判とのかかわりについて話を進めて行きたい。
29日からの報道をみますと、2000人死んだ、いや1万人死んでごろごろ死者が増えているというような話がありましたが、すぐに2000人死ぬということは原発事故ではまずあり得ない。修学旅行で原発の中をうろうろしていたらそれは死ぬかも知れない。しかし原発の建物にはせいぜい100人か200人位でしょう。だからその人達が全部死んだとして200人位でしょうね。それから放射能によって即死するということはまずないですね。また、連鎖反応を起こして容器がメチャメチャになっちゃうということもまずない。事故が起こることによって物理的には即時に何人かの人は死ぬかもしれないが、原発事故の恐しさというのは、原発従業員も含めてこれからなんです。これから数千人、あるいは1万人を超えるかも知れない人々が放射能によって死んでいくんです。
これは今回の事故の規模からいってほぼ間違いないですね。ところが2週間以上たつとそろそろ忘れかけている。「週間新潮」というのはおっちょこちょいですから、ソ連はこんなにひどいとさんざん書きたてる。ところが「週週刊文春」には何も書いていない。多分、雑誌の「文藝春秋」も沈黙を守りますね。つまり、ちょっと先が見えるやつは必ずこれは日本にはね返る。ソ連のことだといって大騒ぎしていると日本がやられる。住民が日本の原発を止めろといってくるということで沈黙を守る。で、おっちょこちょいのマスコミはジャンジャン書きたてて、あとはすっと消える。こういうことでは本当の原発事故の恐しさはわからない。
それから、国際原子力機関が動き出していますが、仏、米を含めて、チェルノブイリ原発の被害を隠蔽していくことに総力をあげて協力するだろうということです。実はたいしたことはなかったんだという報道が必ず行なわれるだろう。炉心溶融も実際にはどうかなっていう話まで出てくると思うんです。新聞報道というのは起こった時はソ連だということもあって、ウワーッと騒ぎ出す。そしていやまてよ、これじゃ日本の原子炉が止まることになってこれはまずい、ということで鎮静化をはかる。まあ、意図的なこともあるし、新聞記者があまりよくわからないということもあると思いますが、今日の「東京タイムス」には原発封鎖は数百年に及ぶと書いてある。これはこの通りですね、数百年たったってダメかも知れない。放射能除去にはなお数ヶ月を要するとある。これはとても数ヶ月なんでもんじゃないですね。それから、溶けた炉心が地球の中にもぐり込んで中国までいってしまう、そういうことが始まる寸前だといっている。それが炉心溶融だと思って書いているんですね。このチャイナアクシデントというのは一種のブラックジョークで、原発の恐ろしさのシンボルにはなっても、現実の問題として主張している人はいないわけです。これは悪意があって書いているのではなくて善意なのでしょうが、正しくはありません。私が取材された「東京新聞」では、東海第2原発で事故が起こった場合の災害評価の問題で水戸周辺の早期障害者数1万9000人を1900人と書いている。(死者は1800人ですが)これは悪意ではなくて多分ミスプリなのでしょう。この記事を見た人が大変な驚きを示しているわけです。1900人という1桁違いの誤報でも大変だと感ずるわけだし、事実大変なことなのですが、正確には1つOを加えて話はしていただきたいと思います。
つまり、数字というのは1000を超すと、1900人でもすごいと思うし、1万9000人でもすごいし、19万人でもすごいと思う。人間の頭というのは区別の判断を受けつけなくなってしまうんですね。だから、その感覚的な受け止めだけではだめで、今度は逆に、いやたいしたことない、やむを得ないことなのだ、10年もすればすむよという宣伝がきいてくると、そう思い込んでしまう。だから、やっぱり感覚的だけではなくて正確に押さえていく必要があるんです。それから、反対派の側の資料ににもちょっとまずいのがありまして、チェルノブイリ原発事故の放出放射能はスリーマイル島原発の20万倍だなんてことを書いているチラシがある。そうするとスリーマイル島事故はたいしたことない事故だということになっちゃうんですね。そんなことは絶対にないわけで、あの時も1300万キュリーも放出されたんです。今度のは多くてもその100倍ぐらい、つまり10億キュリー前後だろうと私は考えています。もし20万倍とすると、実際には炉内にできる放射能の100倍以上にもなってしまって理屈に合わないわけです。やはり、私たちの宣伝は正確でなければならないと思います。
チェルノブイリで何が起きたか

次にチェルノブイリで何が起こったかということですが、ほとんどの報道機関が炉心溶融、メルトダウンが起こったと言っています。私もそう思いますが、動かない証拠は日本に降ってくる死の灰の核種です。新聞や科技庁の発表では、何故かヨウ素のことしか言わないのですね。確かにこれは甲状腺にたまって障害を起こしますし、発育期の幼児は普通人の10倍以上もの影響を受けますから大騒ぎになるのは当然なのですが、実はその他にセシウム、ルテニウム、テルル、モリブデンというような核種がぞろぞろ出て来ているんです。私の大学の屋上で採っているチリの中にそういうものが入っているんです普通の事故では絶対に出てきません。スリーマイル島原発事故では、これらの核種は出てこなかったと思います。実際、アメリカでも測定されたとはいわれておりません。これらは炉心が非常に高温に達しないと大気中に上昇してこないのです。
ラスムッセン報告という事故解析の報告―――事故確率については評判が悪い―――がありますが、その中でルテニウムとかモリブデンなどという核種が比較的たくさん出るのは最大級の事故で、それより程度の落ちる事故では出て来ない、ということを分析しています。BWR1という最大級の事故では炉心の死の灰の半分が出るとされている。その次のクラスは3%しかでない。ついで2%。多分、3%規模ですと私の大学の屋上の装置ではそれらの核種は検出されないでしょう。ですからチェルノブイリ原発事故は最大級の事故だったということですね。
最大級の事故でどの位死の灰が出るかといいますと、ほぼ10億キュリー。スリーマイル島原発事故では1300万キュリーですから約100倍ですね。


放射能の完全犯罪

10億キュリーの死の灰が出ると、どれだけの被害がでるか。原子炉立地点から北西約10キロのプリピャチ(Припять)という町、南東約10キロのチェルノブイリの町はいずれも人口2万5000人位。まあ、東海村と考えればいい。それから南々東130キロ離れた所がキエフで、人口250万の都市です。
この、10キロ地点の5万人位が事故の翌日、1000台のバスで避難した。そして5月12日の新聞によれば30キロまでが無人地帯になっている。ソ連は広大な土地で街は点々としかないですから30キロ四方を全部無人にすることはさほど困難ではないでしょうが、20キロ四方で70万人という当地では、そうはいきませんね。
事故の翌日に退避できたとしても、致死量に近い放射能をすでに吸入してしまっている。原子炉の内で働いている人や原子炉のごく近傍にいる人は直接に致死量の放射能を外から浴びることが多いんですが、この位離れた所ですと、外部から浴びるよりも大気中にひろがった放射能雲が地上に落ちてきてそれを吸い込むことで被曝するわけです。体の中にセシウムだとかストロンチウムだとかヨウ素を吸い込んでしまうと、これはなかなかどいてくれません。ストロンチウム90というのはカルシウムによく似てますから体の方では一生懸命とりこむし、ヨウ素131も子供の成長にとってとても大切ですからとり込んでいく、そしてそれが絶えず放射線を出し続ける。これを内部被爆といって、これの方が10倍も恐しい。ですから一生懸命逃げた、100キロ先、1000キロ先まで逃げたとしても、1日でも呼吸しちゃっていれば放射能は体の中にとり込まれてしまうし、いったん入った放射能はそれから30年位出て来ない。その間ずーっと、体内は放射線を浴び続けるわけです。まあ早い人は1か月位でいろいろな症状が出て来る。遅い人は30年位でガンになる。30年もたってしまうと、そのガンがあの時の事故の影響かそれとも最近飲み過ぎたせいなのかわからなくなってしまう。これは完全犯罪ですね。放射能の完全犯罪です。


早期死者は数千人、居住不適地は2万平方キロ

今度の場合、25レム以上浴びる人の範囲は50キロに及んだし、退避させられた人も、1日たったあとだから肝腎な吸い込みは終っちゃったと考えられます。ソ連の学者もそういう事を知らないわけではないと思うんですが非常に甘くみている。これからガンなどの症状がどんどん出てくるでしょう。それは隠そうと思えば隠せるし、そういうことになればドイツ、アメリカといえども、原子力推進ということでは仲間ですから黙っていてくれるかも知れない。従ってこれから出てくる被害というものというものはなかなかわからないんじゃないかと思います。
今度の場合、早期障害者、早期の死者は、10キロ圏内から退避した5万人位のうち数千人位と思います。甘いといわれるかも知れませんが私はその程度の数ではないかと見ています。もっと潜在的な障害、髪がぬけてきたとか白血球が増えたとか、そういう目に見える障害ではなくて、じわじわと30年、40年と犯され続けていく人の数は相当数にのぼるだろうと思います。しかしそれは結局、闇から闇へ葬られてしまうのではないかという感じが私にはするのです。
農業に対する打撃、これは相当なものですね。人的被害っていうのは気象条件その他に左右されますし人口密度に勿論左右されますが、農業ができるかできないか、人間が住める土地かそうでないか、というのはそれらの条件には全く無関係です。
今度の場合居住不適地は2万平方キロ程度に達するでしょう。それ位の面積が300年位もの間、人間が住めない土地になる、これは主にストロンチウム90によるものです。人体がそれをものすごく濃縮しますが、植物もせっせと濃縮します。ですから地面にそれがほんの少しあっても人体にまでやってきます。本来は農業も禁止すべき地域になりますね。今度の事故で、まあそれぐらいの土地が奪われるということです。
ソ連は広大な面積があるから、あるいはたいした影響を受けないかも知れませんが、日本ではそうはいきませんね。もし東海2号炉でこういうことが起こったらどうなるか……。ことはむしろ、ソ連ではなくて日本の問題ではないかというのが私の思いです。


格納容器の神話

ところが、そういうことを思う前に、今、原子力推進派の人たちがさかんに言っていることは、あの原子炉にはECCSがなかったとか、これはすぐに否定されましたが、そういうデマも一時流れた。つぎにあれには格納容器がない、日本のには格納容器があるから大丈夫なんだと、そういっている。
この格納容器については、ラスムッセンの解析によると炉心溶融が起きたら、99.999・・・%、つまり100%それは役に立たないといっているんです。ラスムッセン報告は炉心溶融に至る経過として74通りをあげています。たとえば停電が起き、非常用の電源も入らなかったという場合、これは西ドイツの原発でもありましたし相対的に確率の高い現象ですね。あるいは電源は入ったんだけれどECCSが働かなかったと、そういういろんな組み合せを考えて、炉心溶融にまで至る経過を74通りにまとめた。その74の1つの例外もなく、炉心溶融が起こった時には格納容器は30時間、つまり1日半位の間に爆発を起こしてふっ飛ばされるか、炉内にたまった炭酸ガスによって出力も高くなりビシビシとへし折れてしまって放射能がふき出してしまう、ということなんですね。これはNRCが過小評価だからだめだといったラスムッセン報告でいっていることなんです。だから、もし格納容器が大丈夫だというなら、ラスムッセン報告について反証をあげなくちゃいけないですね。それをしないで、格納容器があるから大丈夫という推進側の宣伝は全くのデマゴギーに過ぎない。要するに格納容器はあってもだめだということです。


人為ミス説の無理

つぎに出てくるのが人為ミス説です。これはたとえば、アメリカに較べて日本の故障はすごく少ないといっていますが、信用できませんね。73年に美浜1号炉燃料棒折損事故というのがありました。4年後に暴露されたんですが、時効にかかってほとんど処罰なし。今朝、原子力年鑑を出して調べたんですがこの事故のことは出ていないんですね。これは何故かというと、年鑑に載っている事故というのは、法律にもとづいて届け出されたものだけなんです。美浜の事故は法律にもとづいて届け出されていないから年鑑にはいくらみてもないんです。だから、原子力年鑑をみて、日本の原子炉事故はこれだけかと思ったら大間違いです。何故、あんな重大な事故を載せなかったのか。日本の官僚はしゃくし定規ですから、この1件を載せると、原子力事業者がひた隠しに隠している事故を全部載せなくちゃならない、そこでつじつま合せに、この事故を載せなかった。どうでしょうこの解釈は。本当に不思議な国ですね、日本は。日本の事故はアメリカの20分の1だというのは、ひょっとするとそうなのかも知れません。その言葉を文字通り信用して、日本の企業は本当にまじめにやっているのかも知れません。しかし、いつまで続きますか。僕はそんなことを聞くと思いだすんです。戦争に負けた時、僕は12歳の少年でした。日本は物量はすごく少ない、しかし大和魂があり、いざとなると神風が吹くんだ、だから日本が負けることは絶対ない、そう本当に信じていましたね。零戦というすごい飛行機、日本の技術の粋を尽して作ったものだと、それをまたぞろ聞いているような気がするんですね。
原子炉についても日本は特別なんだ、ものすごく頑張っているんだと。日本人は優秀で技術も優れていると、聞かされれば聞かされる程危ないという感じがします。もう、ぎりぎりの所でやっている。もうちょっと気軽にやって欲しいですよ。
原子力っていうのは爆弾として最もふさわしいんです。一気に爆発させるのにこんないいものはない。しかしチョロチョロ燃やして電気にして使うには、何もこんな大変なものを使う必要はないんです。ウラン235とかプルトニウム238とかは兵器として強大な威力を持つものであって、日常的な平和的な生活には決してふさわしいものではない。そういうものを無理に制御しようとするから事故が起こる。
アメリカでは1年間に日本の20倍の事故を起こしているというが、何か危いと止めちゃう、しょっちゅう止めてるからなんですね。日本はそれをしないで頑張っているというわけです。だから日本では原子炉の緊急停止は1年に0.2回しかない。そんなことではなく、1年に何回も止めるぐらい余裕をもってやって欲しいですね。
人為ミスがアメリカやソ連で起こるんでしたら、日本でも起こる。日本は優れているから起こらないんだという言い方はやめて、もう少しリラックスしてやって欲しいという気がします。


黒鉛炉は危険というが…

つぎに出てくるのは黒鉛炉だから悪いという説です。水素爆発が起こったということは炉心溶融が部分的に始まったということですが、そんな所にいかないで、最初ちょっとした爆発が起こって、それによって黒鉛を遮蔽していた壁が破れて、酸素が供給されて黒鉛が燃え出したと。その火災によっていろんなケーブルなんかが切れちゃって、そうして第2の本格的な炉心溶融が始まったという説です。つまり黒鉛だから悪いんだという話になるんですね。
イギリスのウインズケールの原子炉は黒鉛を使っていますし、東海の1号炉も黒鉛です。黒鉛は危いって強調すると、じゃあ東海1号炉はっていう話になるからあまりそれも言えない。で、何故黒鉛を使ったかというと、ウインズケールの事故の前は、黒鉛が一番安全だと考えられていたんです。日本でも全部黒鉛にしようとしていたんですがウインズケールの事故でもって、それをやめてアメリカの軽水炉に切り替えたんです。そういうわけで黒鉛炉が危いというのはずい分前からわかっていた。
わかっていながら、やはり有利な点があるということでソ連では開発を続け三重、四重の安全装置を作った。日本の原子炉の安全装置が三重、四重というならソ連の原子炉もそうしているのに違いないんです。それだけ一生懸命やったんだと思いますね。


原子炉の潜在的危険性

でも事故が起こってしまった。潜在的な危険性を持っていればどっかで出ちゃう。どんな原子炉でも原子炉そのものが危険きわまりない。というのは、原子炉には死の灰が広島原爆の1000発分――これはいろんな言い方があって、100発分というのもある。それはそれで正しいんです。放射能の総量、キュリー数ではかるとそういえる、もっとも100発分はないかも知れないが。しかし、人間にとって一番害毒のあるセシウム137とかストロンチウム90とかに焦点をすえればやっぱり1000発分入っているんです。人間にとって害が多いというのは半減期が長いものです。そういうものが1000発分たまっちゃうんです。それだけのものがただあるだけでも危険なのに、2500度もの熱を持っている。水の循環が悪くなったりストップすればあっという間に出力が10倍にも増大してしまう、ちょっと狂い出したら止まらない。そんな危険なことをしているんですから事故が起こらない方がまぐれなんです。ですから原子炉は根本的に危いということです。
これに対して、99.9999%、つまり9が6つ並ぶ程安全だ、いいかえれば事故の確率は100万分の1だということ、100万炉年に1回だということがいわれている。これは1炉だけだったら100万年に1回だということですが、このラスムッセンの事故確率論は過小評価だとして、NRCが取り消したんです。


50年間に10%の確率でスリーマイル原発級の事故、3%の確率でチェルノブイリ原発級の事故

現実にもその評価はのり超えられて、2000炉年に1回です。つまり世界中に原子炉は今360基あります。概算で400基とすると、5年で延べ2000基。2000炉年に1回というのは5年に1回の割で起こるということになり、現実にもそうなったんですね。チェルノブイリは。
スリーマイル島事故はどの位で起こったかといいますと、NRCは500炉年から1000炉年に1回といっています。500炉年に1回というのは、1基が50年間(原子炉の寿命)運転している間に10%の確率で起きますということです。
チェルノブイリはどれだけかというと、2000炉年に1回ということは、1基が50年間運転している間に3%の確率で事故が起こるということです。3%って小さいですか。普通だったら小さいですね。明日の降水確率3%っていうとまあ洗濯物干して行くでしょうね。10%っていうと干さないで行った方がいいかも知れない。ところが、東海村の原子炉は10%の確率で事故を起こしますよって、アメリカのNRCがいってんですよ。アメリカの原発反対派の人達は10%なんてそんなインチキ言うな、もうな、もっとだっていっている。私も東海原発裁判の証言で10%ないし20%と言ったのですがまあ無視されました。10%か20%でスリーマイル島原発のような事故が起きているんですよ。起きるんですよ。そんな危険物の存在に黙っていられますか。チェルノブイリの事故は3%の確率で起きるんです。水戸の20万の人がその日のうちにどこかへ引越さなくちゃいけない、.100年間にわたって水戸には住むことができない、そんな事態になる。関東地域の全農業地帯が放射能でおかされるかも知れない、それが3%の確率で起こるというんですよ。そんなものを許容できますか。僕はできませんね。


3%の確率は社会的に許容できない

ところが、東海原発裁判の一審判決で裁判官は社会的に無視できると言っているんです。スリーマイル島原発事故のような事故の確率は、極めて権威ある分析によって、10%ないし20%だということを言ったにもかかわらず、裁判官は社会的に無視できるからいいというふうに判決を下しているんですね。東京にいる裁判官は無視できるかも知れませんが、水戸にいる市民は無視できないですよ。20%という確率は、起きるか起きないかと仮定をすると起きないかも知れない。
しかし危険性は確率だけでは決まらない。確率とそれによって何がもたらされるかということを掛け算して考えるんですね。そうすれば、3%の確率というのはものすごいですよ。巨大なものですね。とても社会的に無視できるものではない。これは皆さん自分の問題として考えたら、とてもそんなリスクを犯すことはできないと僕は思います。


東海で事故が起きたら・・・・

で、ちょっと先廻りしたんですが、日本でこのような事故が起きたらどうなるか。東海2号炉の場合の僕の計算をいいますと、外部被曝、内部被曝あわせて600レムの放射線を浴びると100%死にますが、それだけの量を浴びる人はだいたい5キロ範囲の人、東海村にいる人ですね。少なくとも風下にいる人はその日のうちに逃げ出すとしても死はまぬがれない。原子炉のごく近傍の人は、外部からの放射能だけで致死量の200レム以上を浴びてしまうから、1週間以内に死亡する。
20キロ範囲の人は平均100レム浴びる。100レムというと何%かは死にます。何%というのは8%とか10%というオーダーです。もちろん放射線の影響は人によって違います。小さい子供は一番弱いし、病人も弱い。ですから、あくまで確率でしか言えませんが、東海2号炉から水戸のはずれまでに住んでいる人口の8%とか10%とかが死ぬということです。
それから25レム浴びるのは50キロ、つまり土浦地域までです。25レムというのは広島の被曝者が被曝手帳をもらう線量ですが、この量だと必ず何かが起こる。体の具合が悪くなると考えられます。
以上は、極めて平均的な気象条件、たとえば風速3メートルというのはこの辺では普通です。気象のタイプも快晴というのでもなくどんよりでもない普通のタイプを想定しました。つまりどんよりと曇っていて、風速がないという気象条件ですと、今述べた評価の10倍になります。
気象条件ひとつで、もっとひどいことはいくらでも起こるんです。たとえば雨がザーと降るとすると、わずか1時間でほとんどの死の灰が地面に着きます。そうすると地面からの強烈な放射能による外部照射が起こります。この場合、最悪の事態としては勝田と水戸を合わせて6万人近い人が死亡するということも起こる。これは事故の10時間後には皆退避していると想定してです。もっとのんびり、退避が24時間かかったと仮定したら、もっと多くの人だ死亡します。
こんな大量の死者がでるのは、1つに東海2号炉が水戸とか勝田とか人口密集地帯にあるからです。風向が日立の方だったらどうかというと、これも計算したのですが、雨が降った場合には15万人位の人が死にます。
これに較べたらチェルノブイリでは、20キロ範囲だけを考えてみると人口は10分の1以下です。ですから、退避もより容易に行なわれ、実際に放射能を浴びた人も少数で済んだでしょうが、日本ではそうはいかないというのが私の考えです。


原発事故は大地震より深刻

どんなことからいっても原発の起こす災害というのは関東大震災などに比べてもはるかに深刻です。建物の一時的破壊ということでは大地震の方が大きいかも知れない。しかし、そこに100年も住めなくなってしまう。あるいは農業ができなくなってしまう。というようなことを考えると原発による災害の方がよっぽど大きい。そういう災厄をもたらす張本人がそこにいる。人間が止めようと思えば止まるんです。大地震はどうしようもないですが、原発は人間の意志で、政治の力によって止めることができるんです。水戸市民が、選挙を通じてでもいいし、署名をもってでもいいです、止めてくれっていえば止めなくちゃいけないものだと僕は思うんです。


水戸地裁判決は取り消すべし

東海原発裁判の話を最後にしますと、この判決は本当に奇妙です。よく読むと原子炉は危険であると書いてあるんです。絶対事故が起きないなんてことはあり得ない、人間が作ったものである以上必ず起こる。しかし、専門家がその確率は十分に小さくて無視できるといっているから無視できる。これが判決です。原告の主張は大変もっともだが、国の専門家の言うことをくつがえす程、まだ説得力がないんだから、それはおいておきましょう。そういうことを個々の問題について次々とやった上で、事故の確率は社会的に無視できるというわけです。
あの裁判長は、チェルノブイリの事故が起こった今、何を考えていますかね。少なくとも社会的に無視できるといったことは取り消すべきですね。社会的に無視できないことが現実に証明されたんですから。


安全審査は全部やり直せ

東海2号炉の安全審査では、仮想事故の場合の放出放射能量は70万キュリーと評価された。仮想事故というのは、彼らの定義によれば技術的見地から見て考えられない事故のことです。それで70万キュリーだというんです。そして地域住民への影響はちょっとだと。しかもちょっとの被害も、技術的には起こりえない事故を無理に想定した結果なのだから心配しなくていいんだと、こういう安全評価だったんですね。
ところがどうですか、10億キュリー出ちゃったんです。技術的に起こりえない事故で70万キュリーといっていて、現実には10億キュリー出ちゃったことを何と説明するんですか。炉内にはだいたい40億キュリーあり、そのうち半分ぐらい出ても不思議でない、事故というものはそういうものなんだと僕たちは言ってきたわけです。
技術的に見て起きちゃったんですから、安全審査は全部やり直すべきですよ。


スリーマイル島事故でも犠牲者

最後にもとに戻りますが放射能の被害というのは、早期死、早期障害というのは誰がみてもわかりますし、マスコミも追求するし、隠そうと思っても隠しおおすことはできないだろうと思いますが、問題はその後の長期にわたるガン死ですね。結局それは押し隠されてしまうのではないか。
スリーマイル島の事故も決して被害を出していないわけではないんです。あの事故の直後にあの近辺で新生児(1年未満の幼児)の死亡率が50%上昇した。約500人の新生児が普段より余計に死んでいるんです。これは有意な値です。まさにスリーマイル島事故の犠牲者が存在したんです。しかし、それを事故の際の放射能が原因だとは証明できない。だからといって、死傷者なしと評価していいのかと僕は言いたい。それから現在でも、あの近辺の婦人グループが1軒1軒訪ねて、ガンの発生率を調べていますが、130軒ほど調査した結果、ガン発生率は6倍だっていうんですね。これは大変なことです。だけれども統計学で処理すれば、なんだたかだか130軒か、有意じゃないって否定されてしまうんです。
アメリカは事故の状況を公開して、おおらかでいいなって感じがします。それは一面です。もう1つの面は新生児死亡率50%上昇、ガン発生率6倍、という事実については一切報道しない。そういう領域はタブーにしている。事故の際はワァーッと騒ぎ、しかしその後ずーっと続く災害については目をつぶってしまう。そういうことがあるんですね。細々と続く地道な市民運動をしてしかそういう事実は伝わって来ない。


東海2号炉を止めることが必要

スリーマイル島事故の犠牲者はすでに出たし、現在も出ている。それが闇から闇に葬り去られているというのが真実です。チェルノブイリの場合もガン死者1万人という予測もありますし、もっと多いかも知れない。しかしそういう人達はわからないままに葬り去られてしまうというふうに思うんです。つまり、晩発性の障害に関しては完全犯罪だということです。原発事故は2万人でも3万人でも完全犯罪で殺せるんです。
東海2号の事故で一番ひかえ目な計算でも東京都民のガン死者は8000人です。30年で8000人。こんな数字は無視されてしまいます。よくわかりませんが、東京の1千万人の中で、1年間にガンで死ぬ人は何千人かいるでしょう。その中で200人やそこら増えてもわからない。わからなくても、事実としては原発事故によるガン死です。でもそれは誰にもわからない。わからないというだけで無視されてしまう。ですから原発事故は、どんなに小さくとも起こしちゃいけないんです。
スリーマイル島原発のような事故の起こる確率は10~20% です。東海2号炉のそれも10~20% 。チェルノブイリのような事故の起こる確率は3%です。これは絶対無視できるような数字ではありません。私は水戸市民が本当に自分達の将来、子孫の将来を考えるならば、あらゆる手段をつくして、東海2号炉は止めさせる必要がある、と考えます。どうも時間が長くなってしまいました。(本文は、去る5月14日の講演会のテープを起こしたものです。整理の不手際はすべて編集者の責任です。)

(原文の「プリピッチ」という地名は、今では「プリピャチ」と呼ばれておりますので後者を採用しました。)
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2011/06/08(水) 01:26:26 | | #[ 編集]
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