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だいず先生「原発震災(46)被曝について学ぶ」2011.12.30.
だいず先生「原発震災(46)被曝について学ぶ」2011.12.30.

今日の放射線防護の基準とは、核・原子力開発のためにヒバクを強制する側が、それを強制される側に、ヒバクがやむをえないもので、我慢して受忍すべきものと思わせるために、科学的装いを凝らして作った社会的基準であり、原子力開発の推進策を政治的・経済的に支える行政的手段なのである。中川保雄『増補・放射線被曝の歴史』明石書店2011年p.225

 私は、10年ほど前に研究科の放射線防護のための委員会として必要に迫られて、国家資格であるエックス線作業主任者の資格をとった。その時勉強した試験問題集の冒頭にでていた問題例が「法律は労働者に対する業務上の放射線被曝をいっさい認めていない→○or×」というものである。もちろん、正解は×である。ある限度までの放射線被曝を、公的に許容、認定しているのが法律(労働安全衛生法電離放射線障害予防規則)である

 この法律が依拠しているのが、ICRP(国際放射線防護委員会)の勧告である。著者の中川氏は科学技術史が専門で、本書はアメリカで入手した膨大な文献資料の解読を中心にして、ICRP勧告の歴史とその背景にある政治的な流れを説得的に記述している。放射線防護についての見取り図としてとても有意義な本である。ぜひ多くの人に読んでいただきたい。

 法律では、男性の放射線業務従事者について、年間50ミリシーベルトまでの被曝を認めている。一方、被曝によって白血病になった際の労災認定基準は年間5ミリシーベルトなのである。私は、このくいちがいは法律的に矛盾するのではないか、と思っていたのだが、この本を読んで、そこに法律的な矛盾はまったくないことが分かった。
 年間50ミリシーベルトの被曝を認めるICRP勧告の基本的な考え方とは、そのような被曝によって、生命を損なう労働者が出ることを前提として、その「命の値段」と、それよりも被曝線量を下げるような方策をとるのに必要な経済的コストをてんびんにかけて、その数値を決めているのである。コストをかけて放射線被曝量を下げるよりも、個々の被害者に対して補償したほうが「安くなる」被曝量として年間50ミリシーベルトが決まっている。したがって、当然のごとく被害が発生するのであり、それは労災として「補償・救済」すればよい、ということだ。

 なんとおそろしい考え方であり、法律だろう。原子力発電所でつくられる電気とは、そこで働く労働者の命の犠牲を公然と認め、前提としたものなのだ。そのような電気を使いたくない。あらためてその思いを強くした
 そして、今、原発の労働者だけでなく、一般市民が、子どもたちも妊婦さんも、被曝を被っている。特に内部被曝、つまり体内に放射性セシウムが取りこまれ、体内で放射線が発生していることが、多くの市民についてすでに確認されている。その影響がどうでるのか。

 バンダジェフスキー『放射性セシウムが人体に与える医学的生物学的影響-チェルノブイリ原発事故被曝の病理データ』合同出版20111年は、内部被曝による健康被害を理解する上で決定版ともいうべき文献である。著者はチェルブイリ原発事故で高濃度の放射能に汚染されたベルラーシのゴメリ州にあるゴメリ医科大学の学長を務めていた。その間、1990年から1999年まで、内部被曝の影響に関するきわめて系統的な研究を行った。

 病院で死亡した患者(死因にかかわらず)の遺体を解剖し、臓器ごとのセシウム濃度を測定するとともに、その組織を詳しく観察して病変を検出した。また、それが確実に放射線の影響であることを、放射性セシウムを混ぜた餌を投与したラットで確認した。さらに住民の健康調査を行い、体内の放射性セシウム濃度と健康状況との相関を見た。

 それらの結果によれば、放射性セシウム内部被曝による健康影響は、誰の目にもあきらかである放射性セシウム濃度が高い場合には、心臓の細胞に壊死や病変が観察される。それは動物実験でも確かめられた。こどもたちの体内の放射性セシウム濃度が高いほど、心電図の異常の割合が高い。体内に37から74Bq/kgの放射性セシウムをもつ子どもたちでは、実に90%に心電図の異常が見られる。放射性セシウムは確実に心臓にダメージを与えている。腎臓や肝臓にも影響ははっきり出ている。さらに免疫系、造血系、生殖系、神経系、視覚器官にも放射性セシウム濃度と異常の頻度との相関が認められる。

 ここまでの研究結果をとりまとめて政府に報告した著者は、その成果が評価を受けるどころか、徹底した弾圧を受ける。入試にからむ贈賄の容疑をかけられて、禁固刑を受けたのである。放射線の健康影響をまともに、科学的に究明しようとした科学者は、西側でも東側でも、同じように弾圧を受けてきたのだ。

 「被災者の健康状態は、まさに災害である。しかし、私自身が医者である限り、見込みなしとは言えない。神に誓って私は訴える。尽力できる者は状況改善にベストを尽くせと。」
結論に添えられた著者のメッセージである。私も科学者の一人として、このメッセージを真摯に受け止めたい。

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テーマ:原発事故 - ジャンル:ニュース

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