Yoko's 人生=旅 on this Blue Planet
高速回転中の青い惑星地球、負けじと走り回る一人の記録。
[3.11 文明を問う] (18):最終回 「総集編」 2011年 (47NEWS)
 [3.11 文明を問う] (18): 「総集編」 2011年 (47NEWS)

blog ゲアハルト・シュレーダー氏
ベルリンの事務所でインタビューに応じるゲアハルト・シュレーダー氏

 東日本大震災東京電力福島第1原発の事故は、世界の幅広い分野の識者にさまざまな思考を促した。原発、科学技術と近代化、自然と人間、日本の将来―。インタビューからはこの大震災が現代文明に与えた衝撃が読み取れる。


反省促し改革に期待

  統治不全に危機感

  世界が見つめる日本



1. 原子力は怪物

 「原子力は人類が制御できない科学技術である」脱原発の父とも言えるドイツのシュレーダー前首相は断言した。人間とはミスを犯すものだが、「原子力はミスに寛容でない」から、いったん事故があれば、将来にわたる甚大な被害をもたらすという理由だ。

 ノーベル平和賞受賞者でインタビュー後の9月末に亡くなったケニアのマータイさんは「原子力には政治家の自尊心を満たす魔力がある」と語った。「われわれはこれだけ発展した」という自尊心のために、安全性や代替エネルギーを検討せずに原子力を導入するという批判は、多くの国に当てはまりそうだ。

 イタリアの政治哲学者ネグリ氏は原子力国家」の危険を指摘した。原発を導入してしまうと、国家は地震多発地域の原発をも安全だと宣伝するなど、「原子力に国家体制をささげる」という視点だ。そして国家体制の深部に巣くった原子力という「怪物」からの脱却は難しく、原子力国家の危機は続くと語った。
2. 制度の自壊

 一方、米政治思想家のフクヤマ氏は原子力そのものの問題よりも、統治に目を向けた。難しい科学技術も「最後には制御できる」が、それは「統治制度の『質』」次第と言う。かつての日本は選良が危機に見事に立ち向かったのに、福島の事故が示す政治と原子力産業の癒着、事故後のお粗末な政府や東京電力の対応など「(日本の)諸制度は自壊し始めたのか」と問いかけた。

 旧ソ連のチェルノブイリ事故当時に外相だったシェワルナゼ氏も同事故では「犯罪的」な隠ぺいが被害を拡大したと明らかにし、危機の際に指導者に求められるのは「国民に真実のみを語ることだ」と力説することで、日本の統治の欠点を浮き彫りにした。


3. 自然との共存

 大震災は現代文明のもろさもあらわにした。「反省の時」である。

 カンヌ映画祭で最高賞を受賞したタイのアピチャッポン監督は津波の映像に「横っ面をはたかれ目を覚ました」。自然は人類を抱擁するが、怒り、破壊もすると述べ、「マザーネーチャー(母なる自然)はわれわれの家」という思いで自然を尊重しようと説いた。

 アマゾンの森林保護を進めるシルバ元ブラジル環境相は「モノがあふれわれわれは病気になった」と語り、「全人類を先進国並みに養うには地球が三つ必要」と現代文明の矛盾を指摘、先住民などを含めた文化間、世代間対話で自然との共存の道を探ろうと唱えた。

 「海は自然の冷蔵庫。美しく豊かな情感や知識をくれる」。台湾の漁民作家ラポガン氏は、自然の素晴らしさを切々と語った。こうした声を代弁して文明論の第一人者である米国のブラウン氏は、戦争でなく資源の浪費こそ今の人類最大の「安全保障問題と訴えた。


4. 政治を変える

 大震災は政治への不満を噴出させ、共同体再生の必要性を痛感させた。

世界の大災害を取材した米ジャーナリストのソルニットさんは、災害時に起きる共助は「市民に自信を与え、政治を変え革命も起こしてきた」と説明、「日本でも目覚ましい変化が起きる」と予想した。

福島の事故は脱原発の思想を世界に広め、「既に世界の経済システムを変えている」。

 平和研究の父と呼ばれるノルウェー人政治学者のガルトゥング氏は、「フクシマはエネルギー史のシンボルとなる」と指摘、さらに日本と中国や朝鮮半島との関係も変わると予言した。日本人の内省は隣国との和解に向かうと言うのだ。

 実際、大震災後はアジア諸国から同情、共感が多く寄せられた。「日本よ、泣かないで」という詩を震災後発表した韓国の詩人、鄭浩承(チョン・ホスン)氏は、日本人の苦しみを見て「日本の被災者の涙は私の涙」と感じたと述べた。

 日本人の秩序だった行動は世界が称賛した。一方で秩序を重んじるあまり、服従に陥る懸念も指摘された。

 ミャンマーの僧侶サラ氏は「我慢」について「指導者が優れている場合は意味があるが、そうでない場合は良い結果をもたらさない」と痛烈だ。


5. 賢い国になれ

 アイルランド人政治学者のアンダーソン氏は将来への希望の表明として、日本人はこの大震災で「良質で純粋なナショナリズム」を発揮したと分析。日本が「減速期」に入ったことを認めながら、「トップでなくとも賢い国になれる」と言う。

 技術立国の日本は再生可能エネルギー開発で先頭を走ってほしいとの期待はモンデール元米副大統領ら多数が語った。

 「かつて『飢餓に対する戦い』で世界の模範だった日本は、物質主義でない市民文明をつくる戦いでも模範になってほしい」。ペルー人のノーベル文学賞作家リョサ氏はこう応援した。(共同通信編集委員 杉田弘毅)


blog マリオ・バルガス・リョサ氏
東京のセルバンテス・センターでのインタビューで語るマリオ・バルガス・リョサ氏

blog アントニオ・ネグリ氏
イタリア・ベネチアの自宅でインタビューに答えるアントニオ・ネグリ氏

blog 故ワンガリ・マータイさん
ケニア・ナイロビの事務所で語る故ワンガリ・マータイさん

スポンサーサイト

テーマ:文明・文化&思想 - ジャンル:学問・文化・芸術

コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
http://yokoblueplanet.blog112.fc2.com/tb.php/7654-424b59d9
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事へのトラックバック